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元暦2年(1185年)2月19日夕刻。屋島の源氏と平家が一時休戦状態になると、平家軍の船団から一艘の小船が現れ、竿の先の扇を射よと源氏軍を挑発。外せば源氏の名折れになると、義経は手だれの武士を探す。そこで弓の名手・那須(なすの)与一(よいち)宗高(むねたか)が選ばれる。
与一は「南無八幡大菩薩!」と神仏の加護を唱える。もしもこれを射損じれば自害して果てる覚悟を決め、鏑矢(かぶらや)を放つ。ひゅうっと音を立て鏑矢は見事に扇の柄を射抜き、扇は空を舞い、海に落ちた。沖では平家が船ばたをたたいて感嘆し、陸では源氏が箙(えびら)をたたいてどよめいた。平家物語の名場面「扇の的」である。
この後の平家の運命を暗示するような出来事であった。
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